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俺と麗佳は同じ仕事をしている。
それなのに、だ。家に帰ると、ほとんど麗佳に任せっきり。
「なぁ、お前……飯とかどうしてんの?」
新婚ホヤホヤの隣の男に聞いてみる。絶対何もしていないだろうと、自分を擁護し、ホッとする為に聞いた。
「休日の……朝食くらいしかしてない」
「……え、マジ? してんの?」
「ああ」
弾まねえな、相変わらず。
「どうやって?」
「……彼女に聞けばいい」
「あ、そっか」
麗佳に聞いたらいいのか。たまたま、この部屋に入って来た爽やかな人にも聞いてみた。
「宮さん、料理ってされます?」
「えー……まぁ。料理とか……家の事は僕かな」
「……マジですか?」
「得意な方がしたらいいんじゃない? 僕は苦じゃない。楽しいよ」
そう言って、にっこりと笑った。男だから、女だから。そんな次元で生きてない、あの人。
「何でも出来るんだな」
結城がボソッと言った。
「だな。聞くんじゃなかった」
「お前も、何でも出来るだろう」
「そうでも、ないんだな、これが」
だけど、出来ないのと、しないのは違う。抜かずとも、刀は下げとけってやつ。練習、しよ。
──その日から、キッチンで麗佳の後ろに立つ事にした。いや、いつも立ってるけど。視点を変えた。
「何?」
訝しげな麗佳に
「料理出来る男はどう?」
「……素敵ね」
「……そっか」
「しようと、思ってくれることが」
「うん」
「だけど……お料理まで出来ちゃうと、完璧過ぎない? あなた」
宮さんが出来るって事は……黙ってるとしよう。
「麗佳みたいには、出来ない。けど、簡単なのだけ、教えて。今日から」
「ええ、楽しいわね」
「あー……うん」
そうだな、こんな時間も。楽しい。
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