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「あれは……可愛くないだろう」
「……え?」
「母さんに似たらもう少し、可愛いかったのかな……」
絶世の美女を娘に持って、この人は何を言っているのだろうか。
麗佳の両親に会いに来た日のことだった。
「あんな娘だけど……僕から見たら可愛くてね」
「可愛いです。僕から見ても。お義父さんと同じくらい。……きっと、そう思います」
「うーん……やっぱり世間一般では、そうじゃないんだとは思う。君も……僕くらいまでの盲目なのかな」
麗佳の天然、父親譲り。
「世間一般でも、トップレベルです」
「上手いね、君は」
「そんな、あれではなく……事実です」
「君といると、ずっと笑ってる。可愛げのない麗佳が」
「可愛いですよ、ずっと。だけど……ずっと笑ってて貰えるように……頑張らせて貰えませんか」
「……」
「結婚、させて下さい」
「頼めるかい?」
「はい、勿論。大切にします」
「君の苗字になるのが夢……だって言ってたらしい」
「構わないんですか? その……一人娘……ですし」
「夢、叶えてやってくれないか」
「はい」
「あの可愛げのない娘が、結婚出来るなら」
「可愛いです。僕も、そう思っています。あんなに可愛く育てて下さったご両親に……感謝しています。あ、これは……生意気かもしれませんが」
「……今日は、酒が旨そうだな」
「付き合います」
「ああ、行こう。可愛い……か」
「ええ。世界一」
「まぁ、浮気だけは……」
え……いや、それ、言う?
「ちょっと、しませんよ。絶対! 彼女を愛してます。彼女以外は見えないくらい」
「酒が入る前に、そんな台詞を言えちゃうのかー。僕は言った事ないなー」
「お義父さん!」
恥ずかしくなるわ。
「言ってみようかな……」
ああ、お義母さんに……か?
「ええ……喜びますよ」
麗佳の天然、親父譲り!顔も。
「タイミングが分からないなぁ」
ボソッっとそう言う。いつの間にか、自分の話になってる。だけど、俺より深い、愛が聞けるかもしれない。
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