10988人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
「彼女に夢があるなら、式場の予約は早い方がいい。日にちに希望があるなら」
そんな結城のアドバイス通りにするなら……式場の予約の前にプロポーズだな。
麗佳の気持ちは分かってる。だけど……女性側には色々夢があるかもしれない。
彼女の“やってみたい”を叶えてあげられるのは、俺しかいない。俺の名字になることは、俺しか叶えてあげられない。思い付かないもんだな。
ドラマのような数々のプロポーズも……俺がすると安っぽい。多分言われる。“軽いわね”なーんて。
俺は、あそこがいいんじゃないかななんて思っているけど。うちのじいちゃんにばあちゃん、麗佳のお祖父さんにお祖母さん。ご両親。親族。遠すぎない場所。それに……参列が長くなると疲れるだろう。暑くも、寒くもない季節がいい。
こんなに綺麗な麗佳の一番綺麗な日を、その日まで見守ってくれた人達に見て欲しい。なのに思い付かない。
なのに……
「予約だけ、先にしとこっか。こうしてても時間は過ぎて行く訳だし」
って、言ってしまった。
だから、プロポーズが先だって!俺!もう、何だこの格好悪さ。どうも決まらない。
「ずっと…俺のintimatespaceにいて貰えませんか?」
結局、これしか言えない。そんな俺に麗佳が言った。
「私、あそこの神社がいいな」
付き合う前に初詣に一緒に行った、あの神社。同じ気持ちでいたことに、胸が熱くなる。
「あー、うん。俺もそう思った。場所的にも丁度いい。麗佳が必死に祈ってた……あそこ、ね」
俺の言葉に、真っ赤になって振り上げた彼女の手をそっと繋ぐ。
「何て、祈ったんだよ」
「この思いが……伝わりますように」
恥ずかしそうに、だけど幸せそうにそう言った。
“治りますように。隣の彼女に思うまま触れられるように”俺はあの時、そう願った。
あの場所で、叶えてくれた感謝を、今度は誓いとして伝えたい。
──新たに買った、少し広くなったベッドで今日も一緒に眠る。広くなった意味が無いほどひっついて。寝付きの良すぎる麗佳に少し笑う。
実は言った事がない。結構チキンな俺。今度は起きた時に言うから……今日はこれで。麗佳の耳元に唇を寄せる。
「愛してる」
……あれ……麗佳の耳……赤くねぇ?
最初のコメントを投稿しよう!