番外編その3

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「彼女に夢があるなら、式場の予約は早い方がいい。日にちに希望があるなら」 そんな結城のアドバイス通りにするなら……式場の予約の前にプロポーズだな。 麗佳の気持ちは分かってる。だけど……女性側(麗佳)には色々夢があるかもしれない。 彼女の“やってみたい”を叶えてあげられるのは、俺しかいない。俺の名字になることは、俺しか叶えてあげられない。思い付かないもんだな。 ドラマのような数々のプロポーズも……俺がすると安っぽい。多分言われる。“軽いわね”なーんて。 俺は、あそこがいいんじゃないかななんて思っているけど。うちのじいちゃんにばあちゃん、麗佳のお祖父さんにお祖母さん。ご両親。親族。遠すぎない場所。それに……参列が長くなると疲れるだろう。暑くも、寒くもない季節がいい。 こんなに綺麗な麗佳の一番綺麗な日を、その日まで見守ってくれた人達に見て欲しい。なのに思い付かない。 なのに…… 「予約だけ、先にしとこっか。こうしてても時間は過ぎて行く訳だし」 って、言ってしまった。 だから、プロポーズが先だって!俺!もう、何だこの格好悪さ。どうも決まらない。 「ずっと…俺のintimatespace(ここ)にいて貰えませんか?」 結局、これしか言えない。そんな俺に麗佳が言った。 「私、あそこの神社がいいな」 付き合う前に初詣に一緒に行った、あの神社。同じ気持ちでいたことに、胸が熱くなる。 「あー、うん。俺もそう思った。場所的にも丁度いい。麗佳が必死に祈ってた……あそこ、ね」 俺の言葉に、真っ赤になって振り上げた彼女の手をそっと繋ぐ。 「何て、祈ったんだよ」 「この思いが……伝わりますように」 恥ずかしそうに、だけど幸せそうにそう言った。 “治りますように。隣の彼女に思うまま触れられるように”俺はあの時、そう願った。 あの場所で、叶えてくれた感謝を、今度は誓いとして伝えたい。 ──新たに買った、少し広くなったベッドで今日も一緒に眠る。広くなった意味が無いほどひっついて。寝付きの良すぎる麗佳に少し笑う。 実は言った事がない。結構チキンな俺。今度は起きた時に言うから……今日はこれで。麗佳の耳元に唇を寄せる。 「愛してる」 ……あれ……麗佳の耳……赤くねぇ?
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