第1話 side reika

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いつから苦手なのか、わからない。気づけば苦手だった。何かされたわけでもなく、かといってこの狭い部署内で避けるわけにもいかず……。 ……佳子ちゃんは、普通に楽しそうに会話している。そうなれば、やはり問題は私にあるのだろう。そして、彼もつまらない女だと思っていることだろう。 吉良凌平。彼が苦手だった。何でも器用にこなすところも、余裕のある笑みも。それに、何もかも見透かされそうな、綺麗な瞳も。 ──── やがて4月になって、新入社員が入ってきた。 1ヶ月ほどの研修が終わると、私の隣の席に着いた。“アイドルみたい”だとか、“お人形みたい”だとか……そう言われのが、頷けるほど、可愛い子だった。 【相原(あいはら)るな】 見た目に似合わず、落ち着いた話し方をする、サバサバした子だった。可愛い。小柄な体型。ふんわりとしたスカートがよく似合う。大きな目に長い睫毛、じっと人の目を見るところも……物怖じせずに話するところも……。 この子もまた、私のコンプレックスを刺激した。佳子ちゃんも、るなちゃんも“可愛い人”。それが、羨ましかった。 だったら、それなりに真似たらいいとは思うのに。どうしていいかもわからなかった。彼女もまた、吉良凌平と楽しそうに会話していた。 ──その後、新入社員の彼女に営業を教える為に同行してもらった。覚えのいい子で、分からなければ質問し、メモを取り、自分なりに理解しようとする真面目な性格だった。 帰りに、疲れてるだろうかと休憩の為にお茶に誘った。 「コーヒー、私が買ってきます」 そう言う彼女に断りを入れた。 「結構よ、そんなつもりで誘ったわけではないし。自分で行くわ」 そう言うと、二人分の支払いをしようとする私に 「自分の分は自分で払います」 彼女はそう言った。……気もキツいのだろうか。それとも何か私の言い方が気に障ったのか……。そのまま、無言でコーヒーを飲んだ。 じっと見てくる彼女に 「……あんまり、みないでくれる? 」 そう言うと 「すみません」 そう言って、彼女はますます無口になった。 明日も同行だ。これが3日間続く。……新入社員で、色々気を張っているだろうに、私と過ごすのでは余計に疲れるだろう。申し訳なく思っていた。
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