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いつから苦手なのか、わからない。気づけば苦手だった。何かされたわけでもなく、かといってこの狭い部署内で避けるわけにもいかず……。
……佳子ちゃんは、普通に楽しそうに会話している。そうなれば、やはり問題は私にあるのだろう。そして、彼もつまらない女だと思っていることだろう。
吉良凌平。彼が苦手だった。何でも器用にこなすところも、余裕のある笑みも。それに、何もかも見透かされそうな、綺麗な瞳も。
────
やがて4月になって、新入社員が入ってきた。
1ヶ月ほどの研修が終わると、私の隣の席に着いた。“アイドルみたい”だとか、“お人形みたい”だとか……そう言われのが、頷けるほど、可愛い子だった。
【相原るな】
見た目に似合わず、落ち着いた話し方をする、サバサバした子だった。可愛い。小柄な体型。ふんわりとしたスカートがよく似合う。大きな目に長い睫毛、じっと人の目を見るところも……物怖じせずに話するところも……。
この子もまた、私のコンプレックスを刺激した。佳子ちゃんも、るなちゃんも“可愛い人”。それが、羨ましかった。
だったら、それなりに真似たらいいとは思うのに。どうしていいかもわからなかった。彼女もまた、吉良凌平と楽しそうに会話していた。
──その後、新入社員の彼女に営業を教える為に同行してもらった。覚えのいい子で、分からなければ質問し、メモを取り、自分なりに理解しようとする真面目な性格だった。
帰りに、疲れてるだろうかと休憩の為にお茶に誘った。
「コーヒー、私が買ってきます」
そう言う彼女に断りを入れた。
「結構よ、そんなつもりで誘ったわけではないし。自分で行くわ」
そう言うと、二人分の支払いをしようとする私に
「自分の分は自分で払います」
彼女はそう言った。……気もキツいのだろうか。それとも何か私の言い方が気に障ったのか……。そのまま、無言でコーヒーを飲んだ。
じっと見てくる彼女に
「……あんまり、みないでくれる? 」
そう言うと
「すみません」
そう言って、彼女はますます無口になった。
明日も同行だ。これが3日間続く。……新入社員で、色々気を張っているだろうに、私と過ごすのでは余計に疲れるだろう。申し訳なく思っていた。
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