10966人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
第1話 side reika
──大学の卒業後
化粧品会社の事務として働いていたが3年目に差し掛かった頃……勤め先の企業が業務縮小により、この地域から撤退することになった。半年前に告知され、転職先を探していた際、会社が借りていたこのビルのオーナー会社より打診を頂き、間もなくそのオーナー会社へと再就職を果たした。
正直、有り難かった。通勤環境もそのままに働ける。勤務先が3階から5階へ変わるだけだ。そのうえ、以前より給料面、待遇面も申し分なかった。
ただ、一つを除いては。
事務希望、そう先方に伝えたにも関わらず、営業での配属。近々入ってくる男性二名と、次年度の新卒で入ってくる女性……それから、今は他部署にいる男性とで新たに営業部を作る。ならば、そこで営業事務をと懇願したが
「やってみるといいよ、大丈夫。それに……事務はもういるんだよね」
人事を担当している爽やかな男性は、にっこり笑ってそう言った。
中条麗佳。私は自分にコンプレックスを持っていた。勿論、それに対しての努力は……しているのだけれど。愛想のない女。こんな私に営業だなんて。しかも全く経験のない世界で。まともに人と関われない私が。
だが、期待には応えないと。それを除けばこの職場環境は、とても魅力だった。仕方なくそのまま、承諾した。営業部のない会社があることにも驚いたが……その立ち上げに携われる事は、違う楽しさもあった。
入ってみると、妙に勘ぐったのが馬鹿みたいに癖のない人間関係。営業部がないのは、社長含む上層部がそのポジションだった為。
事業の拡大により、営業部の発足となったのだ。引き続き、上層部が営業の直属となる。
私が望んだ“事務”のポジションにいた彼女は、私の中のコンプレックスをそのまま形にしたような人だった。
明るい性格。近い距離。誰もが彼女を愛している。ふわふわと笑い、誰とでも、いつでも楽しそうに過ごしていた。彼女がいれば、それだけでその場が明るくなるようだった。
……見たくない。そんな気持ちになった。見れなかった。眩しすぎて……。
最初のコメントを投稿しよう!