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「努力してるわ。がさつに動くと男みたいになるから、女性らしく。太るとゴツくなるから気をつけて。それなのに、私といると自分のコンプレックスが浮き立つらしく、離れていく。この見た目に寄ってきたくせに! 自分もコンプレックス無くなるくらい努力して、プライド持てるくらい尽力しろってのよ。それを、努力なしで人のせいにするなー!! 」
そうだわ、そうだ。努力してる。変わる努力も。去って行った男たちは、私より自分のプライドを優先したに違いない。
いらない、そんな人!!傷ついたりもしない。
「私も! この見た目に勝手に子犬イメージつけといて、案外キツイだの、イメージ違うだの。キツイのもいい! とかどMも寄ってくるし、オタクウケもするから、怖い感じの人も出待ちしてたり……あぁもう! ! 思ってたのと違うって、しらんがな! 2次元、2次元に住め! ! 」
驚いた。るなちゃんにも、そんな苦労があったなんて。可愛いのも、苦労するものなのね。ただ、ただ、羨ましいとだけ思っていたのに。話さないと分からないものだ。私達はしっかりと握手を交わした。
「あ! そうだ! うちの営業の3人は? あの人たちなら堂々と横に並べると思うけど……」
佳子ちゃんの言葉につい言ってしまった。……長く秘めていた感情を。小さなハートブレイクのせいか、お酒のせいか……
「私は……あの人……苦手だわ」
二人共、ピンともきてない。
「……吉良くん。あ、嫌いってわけじゃないのよ? ちょっと……苦手なだけ」
「え、え~! なんで? 一番フラットじゃないですか?吉良さんって優しいし、紳士だし、いい距離を知ってる……色々、スマートですよ!? 」
るなちゃんの言葉に佳子ちゃんも、大きく頷く。案の定、とても驚かれてしまった。そうよね……非の打ち所のない人だもの。
なのに……自分でもよくわからない。なぜなのか。
「ん~、何かあったとか、されたとかじゃなく……一歩引かれてる感じ? 一緒にいたら、いたたまれなくなるの。にっこり笑っていても、ほんとは何考えてるのか……。全部見透かされてそうな目も……苦手」
そう、あの……綺麗な目。あの目で見つめられるのが、嫌で本当に苦手だった。
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