6121人が本棚に入れています
本棚に追加
「可愛は裕には懐いてんだよなー」
仁さんの言葉に母親が
「裕は仁に似てるからじゃない?」と、返す。
「……パパだよー」
ふざけて、抱き上げた従妹はちっちゃいながらももうすっかり女の子だ。
「パパの方が格好いいよなぁ」
仁さんが大人げなく俺の手から可愛を取り返した。
「仁! もう、メロメロね」
「天使だと思ってる」
仁さんが真顔でそう言った。
「そりゃあ、可愛いから可愛ってつけたんだろ」
からかいで言ったのに。
「そうなんだ、裕、分かるか?」
仁さんは大真面目だ。
「綾さんが冷静で良かったよ」
「そ、あんたたちの父親も、愛にはそんなんだったわよ」
兄貴、俺と男が続き、3人目に産まれた妹は愛だもんな。
「なぁ、大友家はみんな女が強いぞ」
仁さんがこそっとそう言った。
「仁、聞こえてるわよ?」
母親が仁さんを睨む
「綾さんも?」
「そ、怖えぇ。でも、いいぞ、しっかりしてる女が」
「ふーん、覚えとく」
「ああ、だからまだかなーって……」
仁さんがニッと笑う。朋子はそんなんじゃねぇっての。今度は大袈裟なジェスチャーで“あり得ねぇ”と伝えた。
最初のコメントを投稿しよう!