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……いつの間にか、どんどん体格差は開いて、朋子の纏められた髪の下、華奢の首もとに目を落とした。
「髪、下ろすかマフラーしろよ」
「あ、そっか。マフラーは家だし」
朋子がゆるく纏めていた髪をスッとほどいた。風に巻き上げられる髪から、仄かなシャンプーの香り。嗅覚から感じる、何かに無理に蓋をした。考えてはいけない気がしたから。
「じゃね、裕!」
「おお」
偶然出会ったから、一緒に登校しただけだ。たまにあるこんな光景を誰も何も言わなくなった。
“そんなんじゃない”ってのが、みんな分かっているからだろう。わざわざ待ち合わせして会うことも、特別な事があった訳でもないからだ。
小さくなって行く朋子が、ほどいた髪を揺らし……消えていくのを眺めてた。
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