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「ねぇ、荷造り済んだ?」
「ああ、何も持ってくもんないしな」
「おばさん、裕の部屋行くね!」
何で俺の部屋に行くのに、俺の許可じゃなくて母親に許可取るのか知らねぇけど
「はーい」
母親の返事を聞くとすぐに、上の階へと階段を登っていった。
……変なもん、置いてねぇよな?自信はないもんで、朋子を追いかけた。
「うわ、相変わらず汚いなー」
「うっせ、片付けて行くんだよ」
床に開けっぱなしのスーツケースを見て
「ほんと、少ない荷物だね」
と、朋子が言った。朋子はちょっと出かけるだけでも物凄い荷物だ。
「一体どこまで行く気なんだよ」ってよく朋子をからかったもんだ。
「向こうに何でも揃ってるしな、買えばいいだろ、向こうで」
「そっか、裕は……そうだね」
妙に引っかかる言い方をしやがるもんで
「なんだ、それ」
「私は……知らないからさ、向こうを。だから、不安でいつも荷物が多くなっちゃう」
「お前だって、行ったことあるだろ」
いつかの夏休み、朋子ファミリーも、一緒にイギリスへ行ったことがあった。
「行った事はあっても、知らない場所だもん。私と裕は違う」
「違う?」
「そう、私と裕は……全然違う」
何に苛立ったのか、そう言われた瞬間、無性に腹が立った。
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