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不安定な自分の気持ちに……触れた方の俺が慌てて手をどけた。
「俺も、行こうかな、九州」
「うん、そうだね。美味しいお店とか、探しておくね。みんなで、来て」
『みんなで』
そう言った、朋子にふと思い出した。“彼氏”いるんだっけか、コイツ。九州行ったらどうすんだ?
「裕、彼女どうなってるの?」
「ああ、ちょっと前に別れた」
「イギリス行くから?」
「いや、関係ない」
「えぇ、ほんと、早いね。スパンもね」
…………驚いた。俺に“彼女”がいたことも
そんなに続かず、それを何回か繰り返した事も、朋子は知ってるのか。朋子には話した事はないというのに。
それに驚いたせいで、聞きそびれた。質問された時に、質問を返せばいいだけなのに
『お前、彼氏は?』
それが、聞けなかった。
代わりに
「ほら、俺は“みんなの裕くん”だからさ」
朋子が知ってたばつの悪さに、ふざけてそう返した。
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