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変わらない。好きなことも、大事なことも。あの頃、俺の背中にもたれてくる朋子の体温が安心させてくれて、幸せだった。今はこうやって、朋子を背中から抱き締める。
腕の中にすっぽりと入る。あの時と変わらない気持ちが胸に込み上げる。
「デッカイなあ、裕は」
「あー、言うと思った」
こんなところも、ちっとも変わらない。でも、変わったところも勿論ある。背丈、以外にも。
俺は、朋子の“幼なじみ”以外にも“恋人”になった。未だに幼なじみ色の方が濃いけど。俺達の“恋人”の期間は短いだろう。
「なあ、朋、いつ籍いれる?」
「そうね、今年結婚ラッシュでしょう? 」
「だな、義と法子ちゃん、結城と佳子ちゃんな」
「じゃあ、来年かな」
「来年は多分、吉良と麗ちゃん」
「わ、そっか。おめでたいこと続きだね」
「だから、俺達のタイミングでいいと思うけど……」
俺がそう言うと、朋子はふふっと笑って
「大人になって良かった……」
小さな声でそう言った。
ちげぇねえな。俺もそう思う。
朋子のスマホからメッセージの通知音がして、朋子は俺の腕をすり抜けて、画面を確認すると吹き出した。
「何だよ」
「志穂だよ。今日のお礼とか……」
「帰ったとこじゃねえか、早いな」
「ふふ、“羨ましい”だってさ、それと“やっぱりイケメン”だってさ」
「はあ、なんだそれ。デカイとしか言って無かったくせに」
「ほーんと、さすがの志穂も裕の顔を見て“イケメン”なんて言えなかったのかもね」
「おー」
何て言っていいかも分からねえし、適当に返事を返した。
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