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「ま、裕はそうだね」
「……どういう事だよ」
「“イケメン”なんて言われても、そんな反応だよね。まあね、昔から格好いい格好いい言われてたもんね、裕も義くんも」
ここで何で義が出てくるのか、分かんねえけど。俺はまだ、“小学生”のままだったのかもしれない。
「何だよ、朋は誰が一番格好いいと思ってんだよ」
だから、ついこんな事を言ってしまって、朋子の見開かれた目がしっかりと俺を見るもんで、格好悪すぎて俯く。小学生の頃は“一番”って、妙に得意な事だったな。って、思い出したけど、今……朋子に聞くのはちょっと間違えた。しかも、義が相手なら分が悪い。
「さあ、どうだろう。でも裕が一番好きだよ」
……あー、ちょっと朋子の顔は見たいのに、俺の方はまだ顔を上げられない。チラリとバレない程度に視線を上げると朋子も俯いてる。部屋に二人で俯き合う姿に、小学生かよ、と笑う。
そうかもね、小学生なのかもしれないな。
一足先に大人に戻って言った。
「俺は朋子が一番可愛い」
本気で言ったのに、顔を上げた朋子は訝しげに眉を寄せている。
「……本当だ」
って、言っても疑いの眼差し。
そこからどれだけ俺が朋子を可愛いと思うか必死で説明する事になって、途中で言わせたかっただけじゃないのかと気づいたけど、そんな朋子も、可愛いと俺は思う。俺にとって、朋子が可愛いのは、ずっと変わらない事の一つだ。
あの頃は、“可愛い”なんて、言えなかったけど、今は言える。それは変わった事の一つだ。
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