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同窓会の案内がアプリのメッセージで来た。誰かと誰かが偶然街で会って決まったとかで、声をかけられる人だけ掛けてと、今時らしい案内だ。裕のとこにも、私のところにも同じ物が別のルートからやってきた。
「行くの?」裕に聞いた。
「どっちでもいいな。会いたいやつは会えるわけだし」
「そうね、懐かしい人もいるだろうけれど」
「……一緒に行こうか?」
私は首を横に振った。
「こういうのって、行ったら行ったで楽しいんでしょうけれど」
「……一緒に行こうか?」
「はは! いいのよ、裕。もう何も気にしてないし、大丈夫」
裕は私が、行きたいけれど色々言われるのが嫌だから行けないのだと心配してくれているのだろう。
「さすがに、久しぶりに会って、私たちの動向を気にする人はいないでしょ」
「確かにな」
きっと、貴弘は来ないだろう。遠くの街で元気でやっているはずだ。
「いいよ、やっぱり行かないかな。裕は行きたいなら行ってね」
行く気にならならなかったのは、なぜだかわからないけれど、もういいかなって思った。裕のことも、言われても言われなくても気にしないと思う。きっと、遠くの遠く、くらいで“結婚するらしいよ”なんて噂されるかもしれないけれど、事実なのだから、どうでもいい。
今は、そんな気持ちだった。
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