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私と裕は地元へ帰る時は一緒に帰るし、実家の近くには同級生の家もたくさんある。これから、二人でいるところを誰かに見られる事だってあるだろう。
でも、きっと、みんな自分の事に忙しく、私と裕の事を取り立てて噂するような人はもういない。大人になったのだ。思い出して懐かしむくらいのものだ。幼かった、いい思い出として。
───
「想い出デートしようぜ、朋!」
いつもは、だらだらしてるくせに、朝からテンションの高い裕に、朝ごはんもそこそこに車に詰め込まれた。
行き先は……実家?
──車を停めると「行くか」そう言って歩きだす。慌てて後ろを追うと、振り返って私の手を取る。指を絡めると少し手を掲げて笑う。このあたりの家の子供たちは、誰からともなく集まって、一緒に登校した。その待ち合わせ場所、通学路を、通って……行き先は小学校だった。
「閉まってるな」
「そりゃそうでしょ。休日だし、今はセキュリティがね」
「ふうん」
フェンス越しに中が見える。
「変わってないな」
「というか、小学校ってだいたいこんなのだからな。はっきり、覚えてる? 6年もいたのかあ」
懐かしいような、どうだったかなといった気持ちだ。
「トイレが水洗になってる……!?」
「元々ね、それ。もう同級生じゃない人になるわね」
下らない冗談で笑う。ぐるりと学校のまわりを一周する。
「意外に広いな」
「昔は走り回ってたよね。この校庭を何往復も」
「女子は教室であやとりじゃねぇの?」
「……裕……同級生じゃないでしょ」
ははっと笑って、学校から離れて、となりの公園を横切る。
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