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「眼鏡、かっこよすぎる。だから、今日は営業部に来るのは禁止。いや、総務部から出るな」
……全員ここで、ずっこけた。眼鏡かよ。
「……あのねぇ、君、営業部の人間だよね?
あそこまで揃った人達の前に、今さら眼鏡かけたくらいで、俺が……」
あ、宮さん、るなちゃんの前なら『俺』って言うんだ。思わずにやりとする。
「はぁ!? あんなの、有って無いような顔です! あなたに比べたら!!」
ここのフロア全員有って無いような顔だと言われてる。るなちゃんのデカイ声が丸聞こえ。それぞれが吹き出す。おっかしい。あの、俺たちと宮さんへの態度の違い。
まあね、るなちゃんにとったら、彼以外の顔は……有って無いようなもの、だ。
営業部に戻って、それにからかわれても、照れることも、悪びれることもないるなちゃんに……ああ、本当、良かったなって思う。
──俺は……いつの間にか、誰かに興味を持てるようになって、俺の中で“別れても”平気だって思える人はいなくなった。中途半端な付き合いはやめて、大切にしたいと思う人が、たくさん出来た。それが、嬉しくてつい、声が出た。
「はは!」
「何だよ、お前、気持ち悪いな」
吉良にそう言われ
「ああ、すまん。いい職場だなって思っただけだ」
本当に、そう思う。感慨深く思っているとドアがノックされる。
「失礼しまーす」そのまま入って来いと何度言っても、朋子はノックして入ってくる。
「大友さん、これ、字が汚くて読めません」
「はい、すみません」
「はは! 朋子さんも“大友さん”じゃないですかぁ」と、つっこんだ、可愛い顔の横浜、ナイス!もっと言ってやれ。朋子がかあっと頬を染めた。
れに伴い、佳子ちゃんも、麗ちゃんも、るなちゃんも……赤く染まる。 赤くならなかった全員が肩を揺らした。
……なんつーか、いいな、こういうの。
────end
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