いつかのいつか side yu

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 そのまた少し後ろには、人の目なんて気にしたことがないような男、そしてその軽薄そうな男に身を委ね、微笑む麗ちゃん。あー……そう。あんなに、()()()()()してたのに。ま、吉良が女性に潔癖だなんてもはや過去の事だな。  で、もっと後ろにはすんごい顔で周りを睨み、彼を見る女性がいようものなら目つぶしでも食らわしそうな、るなちゃんの姿があった。いや、怖えっつの。可愛い顔が台無しで、そんなことどうでもいいんだろうな。全くこっちに気づく素振りも無かった。宮さんの方は俺に気づくと、躊躇することなく、笑顔でひらひら手を振った。……ったく、爽やかだなー。軽く頭を下げてやり過ごす。どうも、朋子が横にいるとやりづれえ。 「結構、会社の人来てるね」  朋子が俺を見上げて言う。朋子と一緒にいるのを会社の人たちに見られるのは居心地が悪く、「だな」と簡単に返事をした。  結城みたいになーんも言わない奴も、吉良みたいに真っ向からからかってくる奴も、宮さんみたいに微笑ましく見てくるのも、いたたまれなくて苦手だ。  誰の前より、朋子といる俺は素に近い気がして、まるで裸を見られる気になって恥ずかしいんだよな。 「裕? どうかした」 「や、別に」  いつの間にか、朋子が俺の腕に自分の手を添えて俺の顔をのぞきこんでいた。つい、その手をすっと外した。朋子の横では子供に戻ってしまう。それが落ち着かない。
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