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「そう言えば、ここの店、プロデュースした会社の専務も、N.の御曹司も、望月庵の専務もイケメンだったよ。佳子ちゃんに教えてもらったの。いるところにはいるんだねー」
「あー、だな」
……佳子ちゃんめ。ついでに、朋子め。イケメン好きの二人だ。ムッとするが、口には出せない。
「裕はさ、ずっと見てきたはずなのに、未だにイケメン過ぎてびっくりする時あるよ、私。ね? 」
と、首を傾げる。あああああ、これだよ。ずっと義のがかっこいいって言ってたくせに、たったこれだけで俺の顔は緩む。それに気づいて朋子は
「裕、嬉しい? 」
って言いやがる。
「あー、まあな」
そう返すと朋子はくすくす笑った。
朋子の前では強くありたいのに、朋子の前では一等弱くなる。何でだろうな。やっかいだ。……でもこれは、
「愛してるってことだな。朋、俺、お前の事、愛してるわ」
「へえええ? 」
言ってしまって、やっぱじろじろ見られて朋子は赤面したけど、俺はガイジンってことにしといて。ほらさ、その顔とか、どんな顔でも美人だなーって思う。いや、朋子のやつ動揺して大福全部食った。俺のはよ。
でよ、普通『愛してる』つったら、“私も”とか言わねえの?催促の咳払いをしたけれど、朋子はどこ吹く風。
もう一回言ってみるか?
「裕、ほら、食べたら帰りましょう。並んでるし、席空けた方がいいよね」
「……あー、朋は、俺といるんが恥ずかしいんだ」
仕返ししてみたが、
「恥ずかしいに決まってるでしょ! 」
と言われて、謝った。
「ごめんって」
「あとでね、家でね」
朋子はそう言った。そうだな、家なら会社の人もいないし、平気だ。
「んじゃ、俺ももっかい言う」
朋子がふふっと笑った。朋子は、俺が愛していることを知ってる。朋子が俺を愛しているか……は、家で聞くことにする。朋子は恥ずかしがり屋だからな。どうも、朋子の横では決まらない。でも、この日の帰り道は朋子は自分から俺の手を繋いだ。
――――――――end
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