第14話 side yu

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分かっていたけど、敢えて口にしなかったのは、こっちを優先したくないからだ。 「……名古屋には、来てくれるの?」 「ああ、月に数回は行く予定だよ」 「仕事で、よね?」 「……そうだけど」 「私が、いつから名古屋に行くか知ってる?」 「……」 知らなかった。というか、いつでも良かった。それは、名古屋でもこっちでも……いつでも、会おうと思えば……会えるからだ。 「いつ、行くんだよ」 「……教えない」 「何だぁ、それ」 ああ、既に……めんどくさい。分かってる、自分でも。もう少し一緒にいたら、いつしか、情も湧いて、生活の一部になって、変わらない事に安心して、身内みたいになって、それから……。 「大友くんって、友達と恋人の差がないね。取引先の人間だということと、恋人の差はちょっとフランクになったくらい?」 「……悪い」 「いいよ、あのまま行ってたら引きずっただろうし、こうなって良かったよ。私には太刀打ち出来そうも、ない。引き留める気もないでしょう?」 「……そうだな」 「それから、幼なじみとの初詣も、譲る気はないのね。恋人より、幼なじみ優先って……そこにだけ“差”があるのね」 彼女は最後にそう言った。俺にとっては聞きなれたセリフだった。
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