第15話 side yu

2/6

6069人が本棚に入れています
本棚に追加
/406ページ
吉良は……元々、人との距離感は近いのだろう。俺もそうだと言われるが。 初対面で、俺の背中に手を添えた吉良を思い出した。あれを女性にもしてたなら、結構ヤバいな。そう思って苦笑いする。 ……寒いな、今日は。電車を降りると外の空気が顔を一気に冷やした。 クリスマス・イブ。 この時間だと学生か、街はカップルが多い。寒さも感じられないんだろうな、そんな空気が二人の間に流れる。 誰といても、俺は楽しい。だけど、そういうのではないんだろう。見つめ合う、若い二人を見てそう思った。 こんな風に考えるようになったのは……職場の空気のせい、か……。 「ふぃー、さっぶ。今日めっちゃ外寒いわー!」 そう言って、営業のフロアへと入った。部屋の中は随分と暖かく、俺の心も温まる。落ち着く、ここは。 「人肌恋しくなるシチュエーションばっちりだわ。さすが、イヴだねー」 「お疲れ様ー」 「おー、お疲れ。なに?そ んな相手いんのお前だけじゃん。俺、人肌無理だし」 ……吉良がそう言う。まあ、そんな急に大丈夫になるわけもないが、そうだな。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6069人が本棚に入れています
本棚に追加