糸悪戯

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僕はきっと気持ち悪い人間なんだと思う。 よく頭のネジが外れてるだとかそういう喩えを聞くけれど、僕の場合は本当にそれだ。 ネジなんかひとつもない。ゆるゆるなんだ。 いつだったか、大学の解剖実習で人間の脳みそを持った事がある。想像していたよりも大きかったそれは両手で持ち上げなきゃいけないくらい重かった。 あんなに重いと感じたのに、僕のそれは空っぽな気がする。 脳みその質量は人によって異なるんだろうか。 僕には何もない。何も。本当に、なんにもないんだ。 この狂った思考回路が、唯一僕が僕である事を証明してくれている、だなんて。ほんとうに、皮肉すぎて笑えない。 僕がこんなに気持ち悪くなったのはいつからなんだろう。そもそもこれが先天的なものなのか、後天的なものなのか。そのどちらなのかも分からない。 この世に産声を上げる前、それこそ胎児の時。 母親のお腹の中に何か大事な物を忘れた気がするし、 「…可愛い、こっち見て」 目の前のこの人に、何か大事な物を(うば)われた気もする。
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