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その人は僕の脚をぐいっと持ち上げて、自分の肩に掛ける。
「久しぶりだから、痛いかも」
そんな言葉が耳に届いた瞬間、僕の中心に、冷たくてドロッとした物が塗られる。その感覚は何度味わっても慣れなくて身体がビクついた。
次いで熱いモノが当てがわれる。無意識にごくりと喉を上下させ、ぎゅっとシーツを握り締めた。
「っ」
本来受け入れるべきじゃないところに僕のよりも大きいその欲望の塊が押し入ってくる。痛いなんてもんじゃない。苦しいなんてもんじゃない。
それが奥へと進む度に内臓が押し上げられているような感覚がする。喉が締め上げられたように息ができなくなる。
「ぅ…、ぁ…っ」
「ゆっくり息して、力抜いて」
大丈夫だよ、と優しく頭を撫でられて、涙が溢れてくる。
侵入を拒む様に僕のそこがきゅっと締まれば、目の前の綺麗な顔が少し歪む。ああ、こんなにも背徳的な事をしているのに、その表情に胸が熱くなるだなんて。やっぱり僕は、気持ち悪くて、おかしい。
「あ…あ…」
僕は、ふたつの禁忌を犯した。
きっと神に背く事だ。家族も絶望するだろう。
割と裕福な家庭に生まれ、優しさの塊みたいな母さんと頼り甲斐のある寡黙な父さんに大事に育てられ、愛情を注がれてきた。
そして、今、目の前にいるこの人だって。
「…にい、さ…っ」
兄さんだって、僕をこよなく愛してくれた。
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