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ゴホゴホと噎せ返りながらも酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す私の顎をがしっと掴んでは、無理矢理顔を上げさせる。 ふっと顔が近づいてきたと思った次の瞬間、私の口の端から垂れた唾液をペロリと舐め取った熱い舌がそのまま口内へと差し込まれた。 「…っふぅ…っ、」 まだ呼吸も整っていない上に酸素を貪るような深いキスについていけるわけがない。 次第に頭がぼうっとして、クラクラしてくる。 下唇を優しく甘噛みされて、ピクッと身体が震えた。 こんなの、絶対いやなのに。 いやな、はずなのに。 「…雪、って呼んでみ?」 囁くように紡がれるその甘さを孕んだ声に、全てを委ねてしまいそうになる。 「…っゆ、き…っ」 もう正常な思考回路なんてとっくに朽ちていた。 まるで応えるようにその名前を呼べば目の前の男--雪は、クスリと妖艶な笑みをひとつ零して私の首筋に顔を埋めた。 「…なぁお前、ピアス開けたら?」 「…っん、」 熱い舌が肌を這う。 雪が喋るたびにかかる吐息にですら反応して、背中にゾクゾクと甘い痺れが走った。
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