始まりとは、何時何処でも起こるものなのです。

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第5劇 自鳴琴(オルゴール)を鳴らしませう。 私達は玄関に行き、観音開きのドアを開けた。 そこには甚平を着て腰に大きな巾着を付けた 小柄なおじさんが立っていた。 私を一瞥したあと、巾着から何かを取り出し こう言った。 「お嬢ちゃん、甘いもの食べれるかい? あたしが作った金平糖なんだが」 お礼を言い、渡された包み紙を開けると綺麗な色合いの 金平糖が入っていた。 それから、壱弐参がところで、どうされました?と聞くと 「壱弐参この間、畑仕事手伝ってくれただろう? それでお礼を言いに来たんだ。 お前さんのおかげで何とかなったよ。」 「あぁ、そういうことでしたか。いいんですよ、お礼なんて 普段私も色々お世話になってますので、これくらい」 「いやいや、本当ありがとうな。 これはお詫びの品だ。受け取ってくれ」 そう言って壱弐参が受け取ったのは、木製の オルゴールだった。受け取った壱弐参はとても、嬉しそうだ。 壱弐参がありがとうございますと言うと おじさんが私に話しかけてきた。 「そういや、お嬢ちゃん。あんた名前は?」 「時瀬鈴音です。ちょっとした理由でこちらに」 「そうか。あたしは靈十吉(ろときち)だ。ちょっとした 品物の神と言ったところだ。まぁ、おじさんとでも 呼んどいておくれ。じゃあこの辺で」 おじさんが帰ってから壱弐参に 素敵なオルゴール良かったですねと言うと 「オルゴールは私にとって、とても思い出がある物なのです。 今は絶対に言いませんが、いつか話す時が来るかも しれませんねぇ。」 最後にくふふと笑い、では館の中に戻りましょうと言われ 壱弐参に続いた。
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