弘美の大切な宝物

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 近所でこんな事件があると外に出るのが怖いな、なんて思っていると、弘美がキッチンへ向かい、晩御飯の支度を始めた。 「ちょっと、晩御飯作るの手伝ってくれる? 昨日、手ケガしちゃって」 「いいよ」  と、なんとか機嫌をとりたいと思っていた僕は晩御飯を作る手伝いをすることにした。  弘美の手を見ると、手首がひどく腫れていた。 「大丈夫? どうしたのこれ」 「昨日、買い物帰りに公園に寄って、そのとき会った猫から取られたものを取り返そうとしたときにちょっとね。それより、そこの肉叩きでこの鶏肉叩いてくれると助かる」  ああ、手が痛くて機嫌が悪かったのか。 「わかった。あれ、なんかこの肉叩き曲がってない? 新しいの買ったら?」 「本当だ。それ、昨日新しく買ったやつなんだけど、今度また買ってくる」  どうやら弘美は不良品を買ってきたようだ。弘美は普段しっかりしているようで、たまにこういう抜けてるところがある。  そこからしばらく無言のまま僕は鶏肉を叩き、弘美は味噌汁を作っていた。 「叩き終わったけど、次はどうしたらいい?」 「次は、串に鶏肉を4か5個ずつ刺していってもらってもいい? 串はそこの引き出しに入ってるから」     
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