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ユリちゃんを失ってからユウコとタケルは猫の話題を避けるようになっていた。
ペットロス。
テレビでもしばらく動物ものを見られなかった。
外でたまたま猫を見ても、帰ってそれを話題にすることもなかった。
毎日、小さな仏壇に今日の報告をしていた。
もし、小さな衰弱した猫を見つけたら助けてやって、若い人に譲渡するのはありだと思っていたが、確実に里親が見つかるとも言えないし、自分達の寿命を考えると簡単に新しい子猫を迎えることはできなかった。
幸か不幸か、タケルもユウコも、生活する中で子猫を見かけることはなかった。
動物の生体販売規制が重くなり、数年前とうとう生体販売をしたら罪になる法律が制定された。
ペットショップという概念すらなくなっていたから、野良猫は猫好きがお迎えしたいって少なくなったんだろう。
不幸な猫がいなくなる世界に近付いたと思うと、タケルとユウコは嬉しいと感じた。
全ての猫の幸せを願っていた。
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