カンガルー

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「さ、今日はたこ焼きとお赤飯よ!」 食卓につき、いただきますをしようと思ったが、ユウコのエプロンのポケットには子猫がいる。 「ごめんね~、今からご飯だから、ちょっとあっちで待っててね」 そう言いユウコはポケットの猫をゆっくり引き出し、即席ダンボールハウスに入れた。 ユウコの手から離れた途端 みー!みー!みー! と大きな声で鳴き出してしまった。 「ほら、あなたにはあなたのご飯もお水もあるし、トイレもあるから、ここにいてちょうだいね」 みゃあーーーーーお! 猫は、箱の中で大きく鳴いた。 「猫ちゃん、ユウコから離れるの嫌なんじゃないか?」 「うーん、でもねぇ、今はご飯の時間だから…」 ユウコが立ち上がりタケルと話していると ガリガリ、バリッ と音がした。 振り返り即席ダンボールハウスを見るとその中に猫はいなくて、ユウコの足首に捕まりゴロゴロ言っていた。 「す、すげーな、そんな小さいのに脱出なんて」 「甘えんぼさんなのね」 子猫をダンボールハウスに入れておくことは不可能なようだったので、ユウコは再びエプロンのポケットに子猫を入れて、押しつぶさないように気をつけながら夕飯をとることにした。
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