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3月になった。一年で一番好きな月。
私の誕生月でもある。
なのに、心は重く塞いだまま。
どこかで雀のさえずりが聞こえ、目が覚めた。
「弥生~ 起きてるの~、起きてるなら、
買い物に行ってきてくれな~い」
母は、何かと私を外に出したがる。
無理もない、去年の暮れに実家に帰って来てから
ほとんど、部屋に籠りっぱなしだからなあ。
去年、5年付き合ったタカシと喧嘩して実家に戻ってきた。
タカシとはゆくゆくは結婚するものと思っていたが。。。
あんなやつ、こっちが捨ててやる。
何もかもが嫌になった。
実家に戻って来たのは雪の降る夜だった。
泣いてばかりの私を両親は何も聞かず迎えてくれた。
父が手打ちうどんを作ってくれた、それはとても懐かしく、そして温かかった。
それからというもの私は部屋に籠ったきり、ほとんど外には出ていない。
「弥生、ゴメン、忘れてくれ。」
タカシの声が聞こえた・・・ような気がした。
「そんなわけないか」
「あ~そ~ぼ~」
「うん、行こ、行こ」
隣の家から子供たちの楽しそうな声が聞こえた。
「弥生~、寝てるの~。」
しょうがない、買い物にでもいってくるか。
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