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 それは奪うことを覚え、  それ以外を知ることなく、  だから、奪い続けた。 Leruqe  たとえば存在するかもしれない、そんな未来の話をしよう。  たとえば死を恐れる人が、それを克服するために、人が生命活動を維持するために必要な何かを探し。  そして―――それが見つかったら。  それが、人から人へ移すことができるものだったら。  ―――奪うことができるものなら。  「奪う人」レルケは、つまりそれを実現する人間であり、唯一だった。  「雇う人」ポーツマンは掃き溜めと化した下町の端の端に捨てられていたレルケを拾い、「奪う人」としての正体を知った。  レルケは当時12歳だった。  「雇う人」は名の通りたくさんの人間を雇う人で、そして雇われた人は世間において酒の席で罵られることが主で、  ―――犯罪者の集団といわれて、まだやさしいと言われた。  そんな中でもレルケの存在は、恐怖の対象。  小さな化け物。  レルケの瞳には、生きる力のない空ろな色が染められ、少年と呼ぶにもさらに低いその痩躯。  彼は数え切れない殺し合いに立会い、そして渦中にいた。  武器は無意味だった。     
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