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レルケの視線を感じるそのとき、その人間の人生の幕は閉じる。
人が生きていくためのエネルギーを視覚し、移動し―――奪い取るその力が、武器と武技の意味を剥奪させた。
ある子供が聞いた。
「奪い取った『あれ』はどこに行くの?」
子供は即座に口をふさいだ母親に連れて行かれ、レルケの返答を聞くことはできなかった。
「・・・さぁ。」
「あれ」は人間から出て行った瞬間になくなっている。だから人間の中でしか存在できないと自然と思っていたが。
―――どうでもいいけど。
それは少年の口癖だった。
生きていなくていい、いつ辞めても構わない。
手をかざす。いつものように。目の前の女の人は先ほどの尊大な格好を突然やめ、僕の目線からでさえ見下ろさなくてはならないほどに這い蹲り、僕の方を見る。
「ああ、お許しください」
そんなにまで乞い願うほどこの命、僕たちの命は尊いだろうか?
こんな―――すぐ、ふと力も入れず、そう思うだけで消えるそれが?
僕にはわからない。
誰かが言うのを聞いたんだ。「命は尊い」。「簡単に奪われていいものではない」。
聞こえたよ。僕の耳にも。でも頭に届かない。どうして。
そのときその言葉は、僕の世界と違うところで響いていると思ったんだ。
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