0001

4/10
前へ
/10ページ
次へ
「これ一つで俺達の数十人の命が助かるんだ!」  大人たちの動揺を他所に、全く構わず続けた。 「こんなちっぽけな石で! 人間が!? なんだそれは!? なんだそれはぁ!!?」  なにやら元気そうなので、レルケはそのまま放っておくという選択肢を諦め、やっと人ごみから抜け出た手をその少年にかざした。 「お前達は! 知っているのか! 人の価値を! 知っているのかぁ!?」  ―――。  何かを呟こうとして、レルケはそして手を止めた。  そのまま「盗人」の少年に近づこうとし、  リンチに参加していた青年が、広場にのこのこと出てきたレルケを見やり笑い飛ばした。 「オイ! 仲間が来たぞ! ガキが! こいつを助けにきたのか!?」  それは、レルケを知らない新入りの「雇われる人」の嘲笑で、それを知らない「盗人」の少年はレルケを見て、叫んだ。 「何してる! 逃げろ!」  「盗人」の少年はレルケを知らなかったが、自分の仲間と認識されたレルケが何をされるか容易に想像できた。  レルケはぼうっとしていた。  特に何をしようとしたわけではなく、この新入りの「雇われる人」が何か邪魔をしてきそうだから先に殺すか、構わず標的を殺すか迷っていた。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加