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憶えているのは青と黄色の光。
半分が暗闇で、もう半分は青と黄色が常に光り輝く光景が見えていたような。そんな夢か現つか判別できないようなものが、レルケの「残る人々」の土地における記憶の全てだった。
レルケはそれが「残る人々」の土地であることなどポーツマンから教えてもらっていないし、そもそも「残る人々」という人種を知らなかった。
「残る人々・・・」
だからそのレルケの呟きには、同情も、哀れみも、嫌悪も何もなかった。
「そうだ。おい。ほんとに知らないのかよ?」
「うん」
オミサスがうなだれる。―――「なんだこいつ?」。普通、この国に住んでりゃ嫌でも耳に入るだろ「残る人々」のことは。ていうか、この国の連中は、もうそんなにも俺達に無関心になっているってことか?
黙考するたびに気を滅入らせているオミサスと、ぼうっと前を行く蝶を目で追うレルケが一時休憩しているここは第11区画街「フリーダム」。昔はこの国を興した王族を糾弾し、議会を作った男達が拠点とし「自由」の象徴とされた場所だったが、今は人身売買、売春のメッカに成り代わっている。
このもう2区画先が、「残る人々」の居住地「ジャガ」となっている。
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