131人が本棚に入れています
本棚に追加
「【コブラ】もあなたの供述通りの量しか作られていませんでした。解決ですよ」
「……僕はどうなる?」
「司法取引による減刑はされますが、執行猶予なしの実刑判決が出るでしょう。もちろん奴らとは別の刑務所に収監されるよう手配します」
「……いろいろありがとうございました。申し訳ありませんでした」
僕が深々と頭を下げると、小山田がため息を零した。
「あなたの本質は善良だと思います。だからこそ、あんな奴らに騙されてしまった。しっかり反省して服役してください。そして、その後はあなたのその才能を人のために生かしてください」
「はい」
「まったく。あなたのせいで私は部下を一人失くしかけましたよ。あなたに張り付かせていた部下があなたに一言言いたいそうです」
そんなことを言って小山田がドアから顔を出し誰かを呼ぶと、パタパタと廊下を走る音が聞こえた。
「翔平さん!」
「純花!?」
勢いよく病室に入って来た純花を見て、弾かれたように僕は起き上がった。
鼻の頭にテープを貼っているほかは元気そうでホッとした。
でも、どうして彼女がここに?
純花には事の成り行きも僕の正体もバレてしまっただろうに。
「翔平さん、じゃない、板倉重弘さん。私もあなたに嘘を吐いていたの。ごめんなさい」
「……もしかして君は……小山田の部下だったの? 僕を監視するために近づいたのか?」
「あなたを見張りながら、あなたから組織のことを訊き出すのが私に与えられた役割でした。でも、親しくなればなるほど、私はあなたに惹かれていった。あなたを好きになったのは本当です」
「僕も、君を想う気持ちに嘘はなかった」
「待ってます。あなたが出所するまで何年でも。待たせて下さい」
「ありがとう……」
嗚咽を漏らした僕の手を、純花がそっと握ってくれた。
END
最初のコメントを投稿しよう!