01

1/13
前へ
/64ページ
次へ

01

「XX。お前が作曲の道に進む気がないなら、無理して進む必要はないよ。  大人の都合に振り回される息子なんて、見たくはないしね」  そう母親が言ったのは中学の三者面談の帰りだったか。  そしてあの時の季節は秋だったか。  中学時代の担任から、執拗に薦められた「アヴェロン」への推薦の話に、あまりいい反応を見せなかった息子が見ていられなかったのか、気を遣うような台詞を言わせてしまったな、という記憶がある。    この国で、音楽業界に進むか進まないかは、大きな分岐点だ。  いや、正確には「全く音楽に関わらない」人間などこの国には存在しないのかもしれない。  それ程、ここでは「音楽」が中心であり、どういった人間でも、少なくとも裏方などで音楽に繋がっていると思えた。  なので、言い直すなら「音楽の花形職業」につくか、それ以外に就くか、となるだろう。  「音楽の花形職業」。それは、演奏者であり、歌手であり、作詞家であり―――作曲者であった。  最近では総合的なプロデューサーもその一人に数えられ、注目され始めている。    そんな中、某後輩君に芽生えた才能は「作曲」。     
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加