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-overture(オーバーチュア)-
シューッ
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ
調理室のコンロに置かれたヤカンの注ぎ口から、白い湯気が一定間隔で噴き出されている。
そのヤカンの周りの空気がその湯気で、暖かそうにゆらゆらと揺れ、室内がそこから暖められていく様子が見て取れた。
ヤカン近くの窓からは、校庭をうかがえる外観がうかがえるが、そこには、暖かな室内に反し、今は白い雪が、まだ夕方に差し掛かったばかりとは思えない、薄暗い空から降り落ちており、今日も外は最低気温を更新するべく、寒々しい光景を広げている。
ヤカンには今もコンロの火がかけられており、もう中のお湯が沸点を超えていくらか経とうかという、ぐつぐつとした気配を伝わってくる。
そのヤカンの前で腕を組み、隣の調理スペースにもたれかかっている男子生徒が、その沸騰の様子をじっと眺めていた。
高校生にしては幼い顔立ちの彼のその視線は、仇敵を睨みつけるに等しい緊張感があり、その場に誰かがいたとしても、そこに声をかけることや、当然水を差すなんてことができる空気ではないように見受けられた―――
ただ、それは「彼女」には当て嵌まらないようだ。
「はむぅぅんっ! おいっしーっ!」
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