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「ようこさん」
「どうしたの?」
私が声をかけると、ようこさんはゆっくりと振り返った。
施設で育った私にとってようこさんはお母さんのような存在で、ふくよかな体型がなおさら、そのことを強く思わせる。
それこそがこの施設で育った子どもたちが反抗的にならない理由であり、ほかの施設よりは多い子どもの人数を抱えながらも、みんなを学校に行かせられるだけの支援金をもらえる理由でもある。
「私の名前って・・・」
「葵ちゃんでしょ?」
コクリとうなずく。
「それって誕生花に関係してたりするのかなぁ」
ようこさんは首を傾げた。
それもそうか。誕生花を把握してる人なんて世の中に数えるほどだろうし、わざわざ名前と誕生日の関連性を考えてなんていられないだろう。
「やっぱなんでもない。勉強してくるー」
「もう少しでご飯できるからね」
「はーい」
そもそも私がそんなことを考え始めたのは、通っている高校でそんな話題が出たからだった。
『私の誕生花って百合なんだって~』
『へぇー』
一人の女子がそんなことを言い出し、みんなの誕生花を調べるというわけのわからない遊びが始まった。
その女子の集まりの中には偶然にも私が混ざっていて、半強制的に自分の誕生花を知ることになったのだ。
”モミジアオイ”
それが私の誕生花だった。誕生花と言っても、ほかの日にちもあるから限定的なものではなかった。それに聞いたことのない花。
友人の一人があることに気づいた。
『モミジアオイ・・・葵の名前って誕生花からきてるんじゃない?』
確かに、と数秒遅れで気づいた私は、帰ってからようこさんに尋ねてみるに至った。
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