第1章 出逢い

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 勢いよくドアが開き取り付けたカウベルが激しく鳴った。 「飯塚、佐竹、ここにいたのか。お前らいい加減にしろ!」  そこに飛び込んで来た、背が高くガッチリした肩幅と身体付きの長めのウルフカットで、切れ長の二重の目元をしかめて、響かせたバリトンボイスはその空間の動きを止めさせた。突然現れたイケメンにお客さまたちの視線はケンカ中のカップルからその青年に移っていた。  雫もその光を背負って登場した青年に目が釘付けになった。   「友長くんには関係ないでしょ!」 「佐竹!」  友長という青年にきつく名を呼ばれた佐竹と呼ばれた女性は、顔を真っ赤にして、先ほどよりも怒りをその顔に浮かべてる。  大声で押さえ付けようとする行為はより反発を呼ぶのではと雫はハラハラしていた。   (そこは大きな声を出して止めに入るのは逆効果なのに…。) 水を運ぼうとピッチャーの持ち手を右手でにぎり、布巾を瓶底に左手であてて動きを止めていた雫は心の中で呟いていた。
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