第9章 愛しいという心

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 雫と和樹は場所を寝室へと移動した。2人の思いは同じだった。熱のある視線を合わせながら服を脱がせ合う。だが雫の震える指先はなかなか和樹のシャツのボタンを外せない。その焦りが気持ちにリンクして雫は再び不安に飲み込まれそうになる。 「……和樹さん」 「どうした?」  熱い視線に耐えられず雫は俯いた。 「雫?怖いか?」  和樹の服を脱がせていた手も止まる。両手を雫の頬に伸ばし優しく顔を上げるように促した。 「……本当に僕で良いですか?……僕、汚れましたよ?」  いきなり雫の瞳に涙が盛り上がる。和樹はその涙がこぼれ落ちる前に雫の目元に口づけた。再び視線を合わせると和樹は言葉を紡ぐ。 「俺は雫が良い。雫しか要らない。それにどこも汚れてなんてない、それなら俺が雫を清めるよ。それで安心だろ?嫌か?」 「嫌じゃない」  大きく左右に首を振ると雫は和樹に強く抱きついた。雫は和樹が良い。和樹じゃなければ嫌だった。 「清めて、僕を和樹さんで上書きしてください」 「ありがとう、雫。俺に染め直すよ」  言葉とともに和樹は強いキスで雫の唇を奪った。まるで雫の全てを飲み込むような勢いで口づけをしてくる和樹に、溢れる涙を止める事が出来なくなった。こんな風にまだ求めてもらえる事に雫は嬉しくて堪らなかった。  互いに素肌を合わせると雫は小さく身震いをした。 「雫?大丈夫か?」 「止めないで!」 「分かってる。止めないから。こっちを見て?俺を見ててくれ」  そう言うと和樹は雫の身体中にキスの雨を降らせる。 「和樹さん、和樹さん、もっと……」  いつになく積極的な雫がそこに居た。和樹の唇が胸に辿りつくと雫の唇から吐息があふれた。 「雫、ここは触れられた?」 「ん、ない。ない、無いです」 「じゃ、ここは?」  和樹は雫の半身に手を伸ばす。口で答えるより先に雫は身体を震わせ返事をした。 「か、和樹さん、ダメ」  雫は自らの半身を口に咥えた和樹を止めようと手を伸ばした。それを遮るように和樹は1度顔を上げた。 「大丈夫。俺を感じて?」 「和樹さん……」  熱い和樹の視線に雫は何度も頷いた。 熱い和樹の口内に雫は和樹の髪をぐちゃぐちゃにするほど感じていた。初めての快感だった。和樹は丁寧にアイスキャンディーを舐めるようにピチャピチャと音を立てるように舐めたかと思えば深く雫の半身を咥えるのを繰り返した。 「あ、あああ、和樹さん……ダメダメ」  先程までとは違う意味で、雫は身体を震わせ熱い迸りをはじけさせる。 「ご、ごめんなさい」  熱を放つと急に冷静になった雫は、上体を起こして和樹を見ると口で受け止めた物を飲み込む姿を目にしてしまう 「の、飲んだんですか?」 「あぁ、飲んだ」  和樹は口の端からこぼれた雫の半身から出してしまった物を指で拭い、その指を舐めていた。その姿はとても雄々しく、いつもの雫が知っている和樹ではなかった。 「これで上書き1つ」  雫の腰に枕を入れ、足を広げて持ち上げると今度は蕾の方へと舌を和樹は伸ばしていった。 雫が身体を捩っても和樹の舌は止まらない。和樹は身体を起こしてサイドテーブルに手を伸ばしローションをとりだした。温めたローションを纏った指で雫の蕾の周りをやわやわと撫でるようにしてから、中指で優しく蕾をノックした。  その瞬間、雫の身体は強ばった。雫の頭の中にあの時の感触が一気に蘇る。痛み、強い異物感、恐怖。 「イヤ!イヤ!しないで、止めて」  雫は腕を振り、身体をよじって暴れはじめた。   「っ!。雫、雫、俺を見て」  あの時を思い出し混乱した頭で雫は首を振り続け涙を流していた。暴れる雫を抱きしめて和樹は混乱する雫の顔を覗き込むように優しく声をだし身体を揺すって和樹は伸び上がり雫に目線を合わせた。 「雫、雫、今触れているのは誰?」  その響くバリトンボイスと身体を揺らされた手に雫の意識は戻ってくる。瞬きを繰り返し涙にけぶる瞳で和樹を見つめ返す。 「和樹さん……。和樹さんです」 「そう、俺だよ。俺がここにいる」  雫は瞬きを繰り返し、何度も和樹の姿を確認した。 「和樹さん、和樹さん、もっとキスして下さい」  その言葉に和樹は優しいキスを雫の唇に何度も落とし、瞳を合わせながら指を優しくいたわるように再び動かしていった。雫の中へゆっくりと指を出し入れしながら深く埋めていく。 「あ、あぁ、あん、あ、あぁぁぁ、和樹さん、和樹さん……」 雫の蕾に触れる指はあの男の物ではない、よく知っている和樹の指だ。ゆっくり時間を掛けて和樹が雫の中に身を埋める頃には雫の記憶は綺麗に書き換えられていた。 「はぁ~」  雫の唇から熱い吐息が零れる。 「これで雫は俺だけのものだよ」  動きを止めた和樹は雫と額と額を合わせて微笑んだ。その微笑みに雫の頬も綻んだ。  そうして2人の熱い時間は身を清める為に入ったお風呂の中でまで続いた。
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