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何度も前から後ろから蕾を攻められ全身にキスの雨を受け取り、身体中にキスの華を咲かせて丸ごと塗り替えられた雫は幸せな夢の中を漂った。
意識が覚醒した雫は視線の感じる方に顔を向けると、優しい瞳の和樹に綺麗な笑顔を浮かべた。
「綺麗だ、雫。もう一度一緒に眠ろう」
1つコクンと頷いた雫は全身の気怠さに身を委ね瞳を閉じると、和樹の優しい腕に抱きしめられながら再び夢の中に落ちていった。
次に雫が目覚めると、未だに和樹は夢の中だった。長いまつげ、印象的なほくろ、全てが雫の物だ。掠れて声の出ない雫は左手を和樹の頬に手を伸ばした。その刺激に和樹の瞳は開かれ数回瞬きをすると鮮やかに笑顔を浮かべた。雫と付き合い出してから初めて見ることが出来た宝物だ。こうして増えるひとつひとつにに雫の中に嬉しさが溢れた。
和樹お手製のホット蜂蜜レモンを飲むと喉も潤いだんだん掠れた声を出せるようになった。和樹に別れを告げてからずべての色を失い、食べ物の味も分からなくなっていた雫はようやく全てを手に取り戻した事を改めて実感していた。
「雫、俺と親父に会いに行かないか?」
「えっ、和樹さん……」
驚きに雫はハスキーな声を出すと今まで幸せに溢れさせていた顔を曇らせた。
「もちろん、ずっと一緒だ。離れないから。俺にも考えがある」
「うん……」
甘えたくなった雫は横に座る和樹に抱きつくと、和樹の首筋に顔を埋め、次に和樹の肩に額をグリグリと押しつけた。
「雫、大丈夫。俺は雫のモノだから。俺は雫だけが居れば良いから」
「はい」
「ずっと側に居るから考えてみてくれないか?ゆっくりで構わないから。な、雫」
返事の代わりに優しく抱きしめ返してくれる和樹に雫はきつくしがみついた。
「お、不良息子が帰って来たわ」
雫が幸せな気分と不安を抱えて和樹の車で家まで送られてリビングまで行くと、お風呂上がりなのかビールを飲んで寛いでいる綾子がいた。その姿に和樹に送られて家まで帰ってきた雫は、綾子のこの言葉で今の今まで昨日から連絡を入れていなかつたことを思い出した。
「ご、ごめん。母さん」
慌てて綾子の近くまで行くと頭を下げた。
「大丈夫よ雫。夕べ和樹くんが家に泊めるって連絡くれたから」
「え、和樹さんが?」
「そうよ。良かったわね雫、しっかり仲直り出来たみたいね」
「うん」
「これでもう大丈夫ね?」
あのレイプ事件があってから初めて見せた綾子の気遣う表情だった。
「うん、もう平気だよ。ずっと和樹さんの側にいるって決めたから」
笑顔で答える雫に綾子にも笑顔が戻った。その笑顔に雫の心は決まった。
(そうだ、僕は負けない。和樹さんのお父さんでも負けない。こんなに強い母さんから僕は産まれたんだから)
「ありがとう、母さん。僕を産んでくれて」
「どういたしまして、これで私も安心だわ。私も結婚を前提のお付き合いが出来そうだわ」
「えっ!け、結婚?」
「そうよ。今申し込まれているの。知 ってるでしょ?私はモテるのよ」
何でもない顔で爆弾を落とす綾子だった。父親が死んで6年、何度も綾子が結婚を申し込まれていたことを雫は聞いていた。それでも父親が大切だと言っていた綾子に心変わりをさせる出会いがあったのだ。
「そ、そうだけど。」
「まぁ、直ぐ結婚する訳でもないし、雫は安心していて」
「安心って、安心できるわけないよ~」
「でも知っていて、私の1番は芳信さんだけだから」
「ならどうして?」
「芳信さんの遺言だからよ。私はその意思に従うわ」
「父さんの遺言?」
「そうよ」
「どんな遺言なの?」
「─いつでも幸せでいること─。それが遺言」
真っ直ぐ雫の顔を見つめて綾子は言い切った。本当に父親だけを綾子は今も愛しているのだ。その強い真っ直ぐな思いは雫も強くしてくれそうだと心から思った。
その夜、雫と綾子は夜遅くまで父親の思い出話に華を咲かせた。
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