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和樹の父親との対決を決めた雫は、翌朝早く起きると直ぐに雫から和樹に連絡入れる為に携帯を手に取った。
ーおはようございます。起きていますか?
返事は直ぐきた。
ーおはよう雫、起きてるよ
ー決めました。和樹さんのお父様の会います。
一拍の開いた後に再び和樹からの返事が来た。
ーありがとう。会いに行く日を一緒に決めよう
ーはい
ー今日、アルバイトは?
ー休みです
ーなら今日会おう。迎えに行くよ。会いたい
画面を見つめながら雫の頬は緩んだ。
ー僕も会いたいです
画面を打つ手も早くなる。
ーじゃ、また後で
ーはい
画面を閉じた雫は少し仮眠を取ってから大学に久しぶりに行くための用意をして家をでた。
雫にとって久しぶりの爽やかな朝だった。
早速日曜日に和樹の父、隼人と雫がレイプを受けた部屋で会うことが決まった。時間が間近になっても和樹は隼人と会うことを渋っていた。なぜなら、場所が場所だったからだ。
「やっぱり止めよう。雫が辛い思いをする」
「大丈夫です。僕は負けません。僕の側にいてくれますよね?」
「もちろんだ」
「なら、僕は大丈夫です」
大丈夫と言い張る雫に根負けする形で和樹も会う場所を心配をしながらも受け入れたがやっぱり納得はしていなかったようだ。
当日、部屋に向かう雫の足は和樹の前で大丈夫と言い張ったにも関わらず歩く速度はだんだん鈍り、部屋の前に着いた時には身体の震えを止められなかった。
「雫、帰ろう」
人目も憚らず雫の身体を和樹は抱きしめ背中を優しく撫でてくる。
「和樹さん。僕……」
「な、日を変えよう」
「こんな所でのラブシーンは止めて貰おうか?」
雫も頷き返そうとした瞬間、和樹の背後から男の声が聞こえ、慌てて離れようとした雫の身体を先程よりも和樹は抱きしめてくれた。
「こんな不躾な所に呼び出すあなたに言われたくない」
(和樹さん……)
「おや、ここまで来ておいて逃げるのかい?和樹、月嶋くん?」
隼人の顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんだ。
「日を改めるそれだけだ」
「私に今後お前たちに割く時間がないと言ってもか」
「くっ!」
「和樹さん。話をしましょう」
雫は和樹のを見上げ袖を引っ張った。
「雫……」
「ね、和樹さん」
「ほう、思ったより肝が据わっておるな。では、部屋に入ろうか」
隼人はカードキーで先に部屋に入り、立ちすくむ雫の手を握りしめてくれる和樹に力付けられ、雫も部屋へと意を決して足を踏み入れた。
部屋はあの日のままだった。綺麗に整えられた部屋。足を止めると和樹が握る手を強くして隣にいることを示してくれた。再び止まった歩みを進める。
(僕は大丈夫。1人じゃない)
ふぅ、と一呼吸して、和樹を見上げてから隼人に向き合った。
「初めまして、月嶋雫です」
「ああ、私が和樹の父、友長隼人だ」
ソファーに座るその姿には威厳がとてもあった。ロマンスグレーのオールバックの髪、その姿はまるで和樹が将来こうなるであろうと想像させる程よく似ていた。雫の言葉を待たずに和樹の方から話を切り出した。
「親父、俺はこれから雫と生きていくと決めた」
「そんな勝手が許されると思っているのか?大学は誰のお陰で通えていると思っているんだ」
冷静な言葉に雫の背中に汗が流れる。
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