夢のあとで

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全く何なんだアイツ…! 元気無さそうだと思ったら急に元気になるし、また意味分からんことばっかり要求してくるし!いや、それは俺も悪いかも知んないんだが…。 それにしても藤倉のスキンシップが過剰なのはいつものことだが、まさか噛みついてくるとは…。本当に犬みたいなことしやがって、何て厄介な大型犬なんだ。 家に帰って確認すると、肩には割と大きな歯型がくっきりと存在を主張していた。痛くはないし服を着れば隠れるが、これは、何というか…。 ふとよぎるのは噛んだ後の、あいつの瞳。一瞬だけ見えたあれは、俺の気のせいかもしれないけれど。これまでも何度か見た、獣のようなぎらりとした光を宿した瞳。あの目に見られると俺はどくんと全身が脈打って、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまうんだ。 思い出してまた顔に熱が集まるのを感じる。多分結構長い間密着していたから、あいつの熱が移ったんだ。絶対そうだ。 耳元であいつが囁いた言葉が、未だ鼓膜に張り付いて離れなかった。 何度その意図を考えても、やっぱりその真意は分からない。 けれどあの瞬間、それまで蜂蜜みたいにどろどろと甘かった彼の声が一瞬にして鉄のように冷たく硬い音になった気がして、凍り付いた俺の背筋をなぞって消えた。
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