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そんな自分に嫌気が差しながら、靴箱をあける。
(ん? 箱……)
それはキレイにラッピングされており、可愛いリボンなんかも付いている。
入学してからこの目つきのせいで、女子からは怖がられ、男子も最初は不良が寄って来て怖かったが、俺があまりに無口なせいでつまらなくなったのか、いつの間にか離れていった。
つまり、友達は誰一人としていないのだ。
いや、誰一人と言うと語弊があるので、念のためきちんと説明しておくと、松原聖子だけは別だ。
彼女は《友達》と言うと、これまた語弊になるのだが、唯一俺と普通に話してくれる貴重な存在だ。
というか、美しい。
というか、優しい。
というか、女神!?
とにかく俺にとっては学校にある唯一オアシスのような存在なのだ。
「おはよっ! 柳沢くん」
そんなことを考えていたら、なんと彼女が目の前に……!!
「……おはよう」
「その手に持ってる箱、どうしたの?」
「これは、靴箱に入ってて……」
「今日は2月13日だから、バレンタインにはちょっと早いか。何が入ってたの?」
「まだ……開けてないんだ」
「じゃあ、開けたら教えてねっ! 約束!」
そう言って、松原聖子は自分の小指を俺の小指に無理やり絡ませ、約束をさせる。
「お、おう」
靴箱から階段を元気に駆け上がっていく。
彼女の短く切りそろえられた麗しいボブヘアが小刻みに揺れている後ろ姿を見送りながら、俺は松原聖子の彼氏になれたら毎日がどれだけ幸せだろうかと妄想した。
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