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そして、時は過ぎて行く。
九月も過ぎて、十月の半ばとなった。
秋の木枯らし。嵐が過ぎ去った後の秋晴れの空は、夏に負けないぐらいの燦燦とした晴天ぶりであった。
あともう少しすれば冬が来る。そんな予感が秋風に紛れて国中を薙ぐ。
そんな中で、今日もユウとアサは過ごしていた。
朝の定時にアサがユウを起こして。四人の大人達と共に朝食を食べ。ギルバート手製の重箱を持たされて、見送られながら寮を出る。
途中、リナと合流し。道すがらにビナスも混じって。学び舎へと向かう。
いつもの日常が戻って来ていた。誰かがそう、実感していた。
そう、思われていた・・・。
「っ!」
教室に入って直ぐ、クラスメート達の賛美の声を浴びながら、アサは気配を察知した。
群れの真ん中から外へと、丸くて大きな金色の瞳を向けて、それを見た。
直ぐ外の木の枝・・・その一本の上に乗って、アサを見返す小さな影があった。
胴体よりも長い尻尾を揺らして、アサを見つめるのは、小さな獅子をした生き物であった。
────リオル・・・。
それの名を、アサは心の声で呼んだ。
その声が届いたのか・・・獅子は一瞬で掻き消えた。
その後を、アサはずっと、見ていた・・・。
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