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 堂々と盛大に告白しているアイリ姫に対して、姫の御付き役として任命されることとなった兄弟は冷静に突っ込んだ。  そう・・・本人の口から先に出てしまったが・・・今年の新入生代表に選ばれた、この女子生徒。実のところ──────歴としたお姫様なのである。  アイリ姫は、前国王デンタルファ国王の愛娘であり、現国王シスマ国王の実の妹という、この国の誰よりも最高の位の出身なのだ。  王族に相応しい最高の教育を受けた彼女であるが、前評議会長であったナペレ・カラムーンの勧めにより、数年前よりこの学院への入学が決定していた。  本当は推薦枠が用意されていたのだが、それはつまらないと、本人が一蹴し、敢えて一般人に合わせて入学前試験を受け、そしてトップの成績を叩き込んだ・・・ということだ。 「これから私は忙しくなるけど。私が王族と知られるとなるとマスコミも黙ってはいない・・・なので!!私についての情報は全て極秘扱いよ!!」 「・・・・・・・・・・・・はあ」  これまた気位高く命じる姫に、ティムとムーニーはそうとしか返せなかった。  身分を隠し、一般身分として学院に入学している・・・・・・と、本人はそう思っている。  気高く仰け反る姫だけが、そう思っているだけで・・・・・・実は、その事実は昨日一緒に入学した同級生達だけでなく、上級生と教職員も知っている。ただ本人だけが知らないだけで。  そんなことも露知らずに、当たり前のように命じる姫に、ティムとムーニーはその事実を教えるつもりは毛頭なかった。 「・・・それで、こんな朝早くから登校されて何をされるつもりなのですか、姫様?」  弟のムーニーからの冷めた問いに対して、アイリは盛大に不敵な笑みを決めた。 「ふ。私についてくれば解るわ。私について着なさい!特別に許可するわ!」 「はは~!」  これまたまた仰け反って命じる姫に、ティムとムーニーは簡単にひれ伏した。  桜の花びらが粉雪のごとく舞い散る通学路を通り過ぎ、無人に近い校門をアイリ姫は堂々とした佇まいで通過した。  その勇ましい姿からして、もう既に王族としての気位が只漏れだ。勿論、本人にその自覚は無い。
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