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それに気付いた何人かの生徒達はちらっと一瞥して、怖れ敬う視線を投げて寄こすだけで、一声かけようとはしなかった。
因みに、その視線に気付いているのはティムとムーニーの兄弟のみである。
注目されているとは全く気付いていない様子で、アイリ姫はグラウンドを横断した。
国立中央学院には、四つ校舎が並んでいる。グラウンドを挟む両側の校舎・・・向かって右が下級生校舎、左が上級生校舎となっている。そして正面に建っているのは職員用校舎。その裏にある古い校舎は今では誰も使用していない旧校舎となっている。
その内、アイリ姫が向かった先は、下級生校舎ではなく、職員用校舎であった。
威風堂々と入って来たお姫様に、通勤したばかりの教員は早速目玉が飛び出しかかった。
何故、ここに?教職員全員同じ思考を抱いているように感じ取れた。
それらの視線を一切眼中から外し、アイリ姫は階段を昇って行った。
二階、三階を抜け、四階まで上がると、廊下を突っ切って、そしてある教室の前で停止した。
「ここね」
アイリ姫が目的としていた場所は・・・・・・生徒会室と呼ばれる場所だった。
プレートに掲げられた文字を確認して、アイリ姫は口元を僅かに吊り上げながら、勢いづけて扉を開いた。
案の定、生徒会室には誰も集まっていなかった。
朝早くから、正面から侵入を果たした姫の行動に、御付きの兄弟は目を丸くしていた。
「姫様」
「ここで何をされるおつもりなのですか?」
「ふ・・・」
自分達の問いに対して、姫は不敵な笑みで返した。
その意味は、その後に解った。
がらり。と、音を立てて開いたドア。その向こうには今期から正式に生徒会役員となった真新しい面々が並んでいた。
これから業務に励もうとしていた彼女達は、侵入者の顔を見た瞬間、怖れ敬うばかりにひっと恐縮した。
震え上がる五人の上級生達に、びしっと、アイリ姫は上申書と書かれた紙を突きつけながら大口開いた。
「貴方達生徒会役員に対して異議を唱えます!私は今この時を持ち、貴方達のみが知る“生徒会裏ルール”に乗っ取って、生徒会臨時選挙を開くことを要求します!!」
覚悟なさい!!
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