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その頃。孤島の真下に、人知れず近付く者達がいた。
「こっちです、先生」
先導するのは、包帯を無理矢理取ったクラウドであった。
そして、クラウドに付いて行くのは・・・・・・濃紺の着ものと黒の羽織を着た、アイズであった。
「すまない、クラウド君」
「いえ。先生には御恩がありますので。まだまだ足りません」
剣呑な表情をずっと浮かべるアイズに、クラウドもまた引き締めた表情で返した。
チョウとユウ達が出陣しようとした直前に、クラウドが五人を呼び止めて、自分も連れて行って欲しいと叫んだ。
息子として、捕まった母を救い出すためだ。
しかし、チョウが厳格な口調で断った。
────駄目だ。君はまだ完治していない。君はここで大人しくしていなさい。
────ギルドに通じる抜け道がある・・・それを知っているのは、僕だけだ!
────私も、私しか知らない抜け道を知っている。お母様を助けたいというその想いは受け取ろう。だが、君では足手まといだ。
────足手まといなんてなりません!!僕には、『龍の息吹』がある!!
『四神計画』の一画として、一『能力者』を無効化する訓練を受けてきたクラウドは、最後まで喰いついた。
だが、チョウの意思は変わらなかった。
────これから相手にするのは、『能力者』じゃない。君なら知っているだろう?彼らの恐ろしさを・・・。
チョウの言葉に、クラウドは反論出来なかった。
言葉も出ずに、悔し気に唇を噛み締めるクラウドに、チョウは付け加えた。
君の母上は必ず助ける。それを信じて、ここで待っていなさい。君に出来ることは、もう終わったんだ。
そう言い残して、チョウ達は出て行ってしまった。
置いて行かれたクラウドは・・・・・・これほどまでの惨めさを感じたことはなかった。
今まで、自分が一番だと思っていた。学力も、体力も、能力も・・・同じく育ってきた他の三人よりも、身体的にも精神的にも秀でていると、ずっとそう思っていた。
なんて・・・・・・・・・・・・なんて、無力なんだ。
自分は、ここまで弱い存在だったのか・・・。
この役立たず。何のための力だ。何のための頭脳だ。
いざという時、大切なものが守れないで、どうするんだ・・・っ!!
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