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 少女の面差しを一目見て、誰もが愛らしいと感じせざるを得なかった。  気丈さは別として、その小さな造りをした鼻も、薄い色が浮いた唇も、そして印象を強めるぱっちりとした目も、真っ直ぐに伸びる長い睫毛も、自然に任せたにも関わらずに美しい線を引くその眉も、名前に負けていない愛らしさだ。  声もまるで鈴を転がすような可愛らしい響きで、言葉使いも丁寧さがある。雰囲気を変えれば、深窓のお姫様だと間違えられたに違いない。  可憐に自分達を見事に追い抜いて見せたその少女に、出席者は見惚れた後に・・・ごくりと、緊張した表情を浮かべ始めた。  見事に挨拶を済ませた後、少女は洗練された動作で礼をして、壇上から降りて行った。  空気とは他所に、式は続けて進行された。  胸を張って席に戻った新入生代表は・・・・・・誰にも見られていないと思い込みながら、口元をにやりと吊り上げたのだった。
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