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入学早々、アイリ・イルミナスは薄ら笑いが絶えなかった。
何故なら、彼女はこれから、この学院で大いなる計画を成し遂げようとしていたからだ。
入学式翌日。きっちりと、寸分たがわず、皺ひとつない制服を着て、朝食もそこそこで、誰よりも早くに登校した。
その間、ずっと薄ら笑いを浮かべたままだった。
「ふっふっふっ・・・来たわね、私の時代が」
もし、偶然同じ時間帯に登校していた生徒が居たら、思わずドン引いていたところだろう。
可憐な顔の上半分には、よからぬ影がかかっており、その菫色の瞳の端が怪しい光で光っていた。さらには、にやりと笑う口から出るのは、怪しげな笑い声。
これを、不審行動と見れずして、何というのだろうか。
何かを企んでいるような表情で登校するアイリに・・・そこへ、慌てて追いかける二つの影があった。
学校規定の男子用制服に身を包んだ、一年生の男子生徒二人だ。
「姫様―!」
「お待ちくださーい!」
二人の男子生徒は、そう呼びながら駆け足で追い付いた。
が、大きな声で呼ぶその二人へと、ぎろりと睨みながら振り返った。
その次には、バチコーン!!と、鋭い音が鳴った。
「姫って呼ばないで。もし誰かに聞かれたらどうするの?」
厳しい表情で、ハリセンを片手に、厳しく言い咎めた。
頭の上にたんこぶを一つ膨らませたそれぞれは、悪そびれのない様子で返した。
「申し訳ありません、姫様」
「わざとじゃないのです、アイリ姫様」
「反省が感じられないわよ!!私を姫と呼ぶのは禁止!!これは命令よ!!解った!?レイニー兄弟!!」
ばばーん!!と、盛大な効果音付きでびしっと凛々しく指を差すその姿には、王族特有の気高さが丸見えだ。
それを指摘しようとしていた、兄のティム・レイニーと、弟のムーニー・レイニーは、そっと口を噤むことに変更した。
「この私・・・・・・国王陛下の妹姫である、このアイリ・エリザベス・ヴィオレット・エレナ・イルミナスが、身分を隠して市井の学院に入学してきたなんて知られたら、たちまち大騒動になること間違いなしじゃない!!そこのところ、きちんと思慮に入れておきなさい!!」
「姫様。もう自白しておりますよ」
「思慮に入れる以前に我々の心の内を裏切っておりますよ」
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