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******  入学早々、アイリ・イルミナスは薄ら笑いが絶えなかった。  何故なら、彼女はこれから、この学院で大いなる計画を成し遂げようとしていたからだ。  入学式翌日。きっちりと、寸分たがわず、皺ひとつない制服を着て、朝食もそこそこで、誰よりも早くに登校した。  その間、ずっと薄ら笑いを浮かべたままだった。 「ふっふっふっ・・・来たわね、私の時代が」  もし、偶然同じ時間帯に登校していた生徒が居たら、思わずドン引いていたところだろう。  可憐な顔の上半分には、よからぬ影がかかっており、その菫色の瞳の端が怪しい光で光っていた。さらには、にやりと笑う口から出るのは、怪しげな笑い声。  これを、不審行動と見れずして、何というのだろうか。  何かを企んでいるような表情で登校するアイリに・・・そこへ、慌てて追いかける二つの影があった。  学校規定の男子用制服に身を包んだ、一年生の男子生徒二人だ。 「姫様―!」 「お待ちくださーい!」  二人の男子生徒は、そう呼びながら駆け足で追い付いた。  が、大きな声で呼ぶその二人へと、ぎろりと睨みながら振り返った。  その次には、バチコーン!!と、鋭い音が鳴った。 「姫って呼ばないで。もし誰かに聞かれたらどうするの?」  厳しい表情で、ハリセンを片手に、厳しく言い咎めた。  頭の上にたんこぶを一つ膨らませたそれぞれは、悪そびれのない様子で返した。 「申し訳ありません、姫様」 「わざとじゃないのです、アイリ姫様」 「反省が感じられないわよ!!私を姫と呼ぶのは禁止!!これは命令よ!!解った!?レイニー兄弟!!」  ばばーん!!と、盛大な効果音付きでびしっと凛々しく指を差すその姿には、王族特有の気高さが丸見えだ。  それを指摘しようとしていた、兄のティム・レイニーと、弟のムーニー・レイニーは、そっと口を噤むことに変更した。 「この私・・・・・・国王陛下の妹姫である、このアイリ・エリザベス・ヴィオレット・エレナ・イルミナスが、身分を隠して市井の学院に入学してきたなんて知られたら、たちまち大騒動になること間違いなしじゃない!!そこのところ、きちんと思慮に入れておきなさい!!」 「姫様。もう自白しておりますよ」 「思慮に入れる以前に我々の心の内を裏切っておりますよ」
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