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真っ暗な暗闇で声が聞こえる。
愛しい誰かの声だ。
護らなくては、
彼女を失ってはいけない
………
わずかに差し込む光は温かく、それでもなお眠りにいざなう誘惑を秘めていた。
「お兄ちゃん」
声がする。いつの声
「ねぇ、お兄ちゃん!アドニムお兄ちゃんってば起きて!もうすぐお昼よ」
「ん…、うーん…」
目覚めてはいるのだが、ひどい頭痛と耳鳴りによって、布団の魔力から起き上がれない。
「う~ん、もうちょっと」
「お兄ちゃん!」
「は、はい!!」
少しいらだちを含んだまだ幼い声に促されるまま僕はは飛び起きた。
とても長い夢を見ていたようで、まだ頭の中は半分眠っているようだ。
「今日は一緒に王都にお買い物、行ってくれるんだよね?」
声の主は妹の「リリム」だ。
まん丸い瞳が少し吊り上がって、仁王立ちをしているが、まだ12歳の妹の前では「恐怖」を思い浮かべることはなかった。
それよりも、その声にどことなく感じるのはいつも通りの日常である「安心感」だ。
だが、思い出せない。
昨日何をして、今日何をする予定だったか…。
まだ頭に血が回っていないようで…
「そうだっけ…、」
と思わず返事をしてしまう。
そして、すぐに後悔した。
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