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「ひどい…」
「リリム…?」
「ひどいわ…、リリム今日をずっと楽しみにしていたのに」
リリムは泣き虫だ。
小さな両の手を、やはり小さな顔に当てて今にも泣きだしそうなしぐさをする。
僕は、リリムの涙に弱い。
きっと兄ならばみんなそうであるように。
「ごめんってリリム!今からでも間に合う?」
「ちょっと…、帰るのが夜になってしまうかもしれないけど…」
「そう!じゃあ行こう。ごめんねリリム、なんだか少しぼーっとしてしまってて」
「風邪、ひいていない?体調は大丈夫?」
「大丈夫だよ!…ん?ほらなんかいい匂いするよ!」
焦りを感じながらあたりを見回し大きく息を吸うと、香ばしいパンの香りが感じられる。
朝の匂いだ。
「もう!今日はリリムが早起きしてしまって、朝ごはん作ってあるの」
「そうなんだ、本当に楽し みにしていたんだね」
「うん!久ぶりのお兄ちゃんとのお買い物だもの」
「本当に忘れていてごめん」
「いいのよ。早くご飯を食べましょう」
今度はリリムはとてもうれしそうにコロコロと笑う。
喜怒哀楽移り変わりの激しい彼女の表情はとても微笑ましく、愛しい
今はもう僕の一人だけの家族。
唯一無二の愛しい妹。
母と父はだいぶ前に「悪い魔女」殺されたのだ。
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