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妹は私と同じ顔をしていながら、ジクジクなどすることのない、明るくそしてずる賢い女だった。親戚などの集まりがあっても妹ばかりが可愛がられ、私はジクジクと嫌味のようなものを浴びせられた。そんな私に優しくする振りをして妹はまたみんなに気に入られた。それが別に嫌だったわけではない。妹は妹なりに、私を馬鹿にするでもなく、ただ傍観していたからだ。変に関わり合いを持たれるよりは、距離を置いてただ見られているくらいの方が楽で安心した。
ただ、今なら分かる。妹はそんな私の姿を、自分の分身の姿を見て、妹自身がジクジクと責められているように感じていたのだ。私が妹の体験を追体験した気分になっていたように、妹も私の体験を追体験している気分になっていたのだ。そうして、耐えられなくなったのか受け入れたのかは知らないが、私の男を奪った。結婚して三年になろうとしていた時期に妹は私になりきり、男を快楽に陥れた。
私のあいだから流れ出た血は、男が私を快楽に陥れた証明だった。男も血を流したのだろうか、そうして快楽に陥れられたのだろうか。
それとも涙を流して、快楽に陥れられたのだろうか。血と涙は同じ成分だと聞いたことがある。それなら、私はいまだに涙を流し続けている。一筋の光は、朝日より夕日より赤く眩しく私の目に飛び込んでくる。妹を刺した右手のナイフ。男を指した右手のナイフ。
二人の涙も血もどちらもが、同じ成分で出来たものを垂れ流しているとは思えない。私のそれも同じ。目から落ちるのは涙ではない。血だ。なぜなら、涙のように綺麗に光を反射するようなものは、もう私の目からは流れない。手の甲の疼痛は、もうない。目の奥がジクジクと痛む。手の甲に落ちるもの。
これは血だ。
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